聞き覚えのあるタイトルと共に始まりましたコブラシリーズ第3弾!
今回は重い!疲れる!とインターネット上で風評被害のひどい「旧型アイアンコブラ」です。
なぜ旧型アイアンコブラなのか?
新型は値段が高い!
このブログでも以前、紹介しましたように新型アイアンコブラは素晴らしい完成度のペダルではありますが、とても値段が高いです。
風評被害による旧型アイアンコブラの価格崩壊
その反面、フットボードがデコボコしている旧型アイアンコブラであればヤフオクやメルカリ、リサイクルショップで捨て値のような値段で叩き売りされている現状。
「この値段でアイアンコブラが買えるなら…」
そんな感情の前に立ちふさがるのがインターネット上で横行する”旧型アイアンコブラ=重い”説だと思います。
今回はその疑惑に真っ向から切り込み、旧型も良い意味で味のある素晴らしいペダルだという事を伝えたいと思います。
そもそもなぜヤフオクや中古市場でアイアンコブラが多いのか
人気が無いから…ではありません!
単純にアイアンコブラが頑丈過ぎるんです。
20年近く前の年代の物がかなりの美品で出品されていることも多く、ヒンジがとにかく頑丈なので中古品でも使える状態の物が多いです。
他社ペダルの場合、中古で売りに出す前に壊れて使えなくなることの方が多いでしょう。
また、売りに出されている他社中古ペダルの中には見た目はペダルの形を留めていても実際はヒンジが死んでいて使えない…というトラブルも。
過酷なツアー環境が続くラウドロック系のインディーズバンドでアイアンコブラユーザーが多いのはこの屈強な耐久性を信頼しているからだろうと常々思います。
真実を知っていれば、現在の音楽シーンでも通用する超高性能なペダルがとんでもなく安く買えてしまう事実
私はヒール&トウなどを用いた片足での高速連打を多用する時に、あえて2世代前の旧型アイアンコブラ(フレキシグライド)を使用する事があります。
それは、軽いと評判のHP50よりもはるかに踏み込みが軽く、戻りも速いからです。
フレキシグライド購入前の注意点
そのトリッキーな踏み心地から均一な音量、音質をキープするのがなかなか難しいペダルです。
このペダルが重いか、軽いかはバスドラムを踏む際の奏法によって、大きく印象が違う事でしょう。
プレス奏法の方の場合、踏み始めの軽さと踏み終わりに感じる強い戻りのギャップにとても踏みにくいと感じると思います。
「打面にビーターをねじ込み、踏み切りたいという演奏者」と、「打面に触れた時点で(レディポジションに)戻ろうとするペダル」とが反発し合うためにこのカム特有の戻りの速さが殺され、スピーディーなアクションを得ることが出来なくなります。
さらには戻りの圧をモロに受け止めた足はローリンググライド使用時に比べ、どうしても疲れてしまいます。
(ローリンググライドに比べてパワーグライドが重いと感じる方も、このパターンの場合が多いです)
オープン奏法の方の場合、超偏心カム特有の戻りの速さに反発する事なく、その戻りの速さを活かすことが出来るので、ペダルの重さを感じる事なく、とても軽快に高速連打を踏むことが出来ます。
以上の事情から、初心者の方やプレス奏法でペダルを踏む方にはクセのないローリンググライドを購入される事をお勧めします。
製造終了した最終モデルをあえて選ばず、さらに旧型を選んだ理由
ほぼ全ての年代のコブラシリーズを使用してきた私が知っている事実として、コブラシリーズに使用されているベアリングは中国製、シンガポール製などの外国製が中心です。
画像は1世代前の旧型スピードコブラに装備されていたベアリング。中国製Z809。
私が使用しているこの旧型アイアンコブラはコブラシリーズには珍しく国産のベアリングが使用されていた年代のコブラになります。
画像は私の所有する旧型アイアンコブラのベアリング。日本製Z809。
初代スピードコブラ発売時、実はアイアンコブラの方がベアリングの性能が上だった!?
2010年のスピードコブラ発売時の謳い文句は「パソコンのハードディスクドライブに採用されている、超精密ベアリングをベースに開発されたFASTBALL Bearing」との事でしたが、実際には同じクオリティの、しかも日本製のベアリングが2007年のアイアンコブラには採用されていたという驚愕の事実…
もちろんペダルの性能はベアリングの優劣だけで決定するものではありませんがこの事実を知ると、旧型アイアンコブラに対する印象が少し変わって来るのでは無いでしょうか?
ちなみに次の旧型アイアンコブラ(ツルツルアイアンコブラ)以降は再び外国製のベアリングに変わっていました。
おそらくフットボードの改良やヒンジの強化のためにベアリングのコストを下げたのでしょう。
パッと見の見た目は同じでもこう言った見えない部分のマイナーチェンジが激しいのもアイアンコブラの特徴です。
時代背景から見るコブラシリーズ改良の系譜
この時期のドラム業界と言えば、AXIS製ダイレクトドライブの影響でペダルのトレンドはアイアンコブラやDW5000を中心とする「出音が大きく、頑丈なペダル」から「踏み込みが軽く、高機動なペダル」へと変化しました。
国内メーカーにおいても、ヤマハのダイレクトドライブを皮切りに、パールはデーモンドライブを発表。
しかし、三大メーカーの中でタマだけがダイレクトドライブを開発せず、アイアンコブラのマイナーチェンジという選択を選びました。(シャフトの固定方法の変更とコブラコイル開発)
なので、私の使用している旧型アイアンコブラは他社ダイレクトドライブペダルと対抗出来るよう開発されたものという事になりますね。
この当時のタマのアイアンコブラに対する意地と想いが伝わってきます。
コブラコイル大ヒットの弊害、注目すべき点はそこじゃないです…
この年代のアイアンコブラと言えば、「コブラコイル」ばかりが注目されていましたが、本当に重要な変化はコブラコイルではなく、シャフトの固定方法の改良です。
コブラコイル開発後の旧型コブラはフレームに対してシャフトが常に真っ直ぐな状態で固定されるように樹脂製カバーでひと工夫されているので、シャフトやベアリングの動きに無駄なロスがありません。
とてもアクションがスムーズで、少しの振動でもビーターが揺れるほどセンシティブなペダルに生まれ変わりました。
当時、シャフトがガッチガチに固定されて微動だにしなかった旧型アイアンコブラ(ネット上で重いと叩かれているのはおそらくこのコブラ)から乗り換えた若き日の私は、そのあまりのスムーズさに不安を覚え、
「どんなにネジをしっかり締めてもビーターがゆらゆら動いてしまう」
と楽器店に修理に出そうとした恥ずかしい記憶があります。
そんなこんなでコブラコイル付き旧型アイアンコブラはダイレクトドライブが台頭していた当時のペダル市場を生き残り、「スピードとパワーの両立」という方向性をスピードコブラに引き継いだ。という歴史があります。
なので、この年代の旧型アイアンコブラにはスピードコブラっぽい部分があると言うか、加速性能がとても高いんです。
この後のフットボードがツルツルになった旧型アイアンコブラというのはスピード面をスピードコブラに完全に譲ったと言いいますか…ヒンジ部分を強化したりと、どちらかと言うと安定性の面に力を入れた改良になっています。(おそらく私のような激重コブラ愛用者の方や外国人の方が新型に移行しやすいように安定性を強化したのでは、と思っています)
しかし、両者を振り子運動させた場合の往復運動の回数はツルツルになった旧型アイアンコブラ(ツルツルコブラ)の方が多いので、実際はツルツルコブラの方がアクションがスムーズなペダルなのでしょう。
ヒンジが強化されていることで踏んだ感じはツルツルコブラの方が若干しっかりした踏みごたえに感じます。
買えないコブラより、買えるコブラ
ネット上の偏った情報によって、本当は「軽い」旧型アイアンコブラまで一緒くたに重いと誤解されて、ヤフオク等で安く叩き売りされている昨今。
使える旧型アイアンコブラを見つけ出し、安く、賢く、購入するというのはある種ドラマーの楽しみとも言えるのではないでしょうか。
「新型のコブラは高くて買えない…」と、毎晩、枕を濡らしているであろうそこのあなたのために今回は重い旧型コブラと軽い旧型コブラの見分け方を簡単に説明していきたいと思います。
購入を考えている旧型アイアンコブラが重いか、重くないかの確認方法
重い旧型コブラ
シャフトの固定部分がPearlエリミネーターのようなまん丸のタイプ。(画像はセカンドジェネレーション以降の黒いコブラですが、シルバープレートの初代アイアンコブラも同じく重いです。)
年代によってアンダープレートに穴が開いているもの、空いてないものがありますが、どちらもコブラコイルが付けられないアンダープレートなのが特徴。
重めのアクションのため、軽いペダルが好きな方は避けた方が無難です。
しかし、この旧型コブラ‥シャフトに付いている純正ベアリングをパールのninjaベアリングに交換するだけで急激に軽くなるというダイヤの原石でもあります☆笑
持っている方は是非、お試しあれ♪
(ベアリングの交換方法についてはまた次の機会に随筆予定)
軽い旧型コブラ
上の画像の旧型コブラと同じくらいヤフオクで見かけるシャフトを固定する左右のフレームが大型化したタイプ。
- パワーグライトが赤
- ローリンググライドが黒
- フレキシグライドが青
と分かりやすくカムが色分けされているのが特徴。
アンダープレートにコブラコイルが取り付けられる…と言うか装備している。
狙うは安く買えるデコボココブラ
この年代のコブラと、この後のフットボードがツルツルになった旧型コブラ(シャフト固定部分がスピードコブラと同じタイプ)を境いにヤフオクや中古市場では値段が一気に高くなります。
ツルツルコブラ(笑)の方が軽快さに安定感が加わり、もちろん優れてはいるのですが、コスパを考えるとデコボココブラに軍配が上がるでしょう。
最後に
こんな感じでかなり長々と書いて参りましたが、
「ライブやレコーディングでも使える手頃なペダル」
「安くても、見た目がカッコよくて所有欲を満たしてくれるペダル」
そんなワガママな要望に都合良く応えてくれるのが旧型アイアンコブラでは無いでしょうか。
ネット上での情報だけを鵜呑みにしていた方にとっては良い意味で驚きのあるペダルだと思います。
踏める人はどんなペダルを使おうが踏めるので…
旧型でも、新型でも、自分が良いと思ったらそれが正解。
自分の選んだペダルを信じて、楽しみながら練習していきましょう☆
ではまた。
注釈
新型アイアンコブラ
2015年9月から生産されている現行品。
パワーストライクコブラビーターというXX戦隊〇〇レンジャーとかが使ってそうな名前の新型コブラビーターを装備。
「安心してください。普通のフェルトビーターです」
旧型アイアンコブラ
1993年のデビューから2015年8月まで生産されていたスプリングの根本が動かない、旧コブラビーターを装備したアイアンコブラ。
旧型ツルツルコブラ
2011年3月〜2015年8月まで生産されていた軽い旧型アイアンコブラ。このモデルを最後にフレキシグライドは生産終了。
軽い旧型アイアンコブラ
2007年1月〜2015年8月まで生産されていた軽い旧型アイアンコブラ。フットボードがデコボコのデコボココブラとフットボードがツルツルのツルツルコブラが存在。
重い旧型アイアンコブラ
1993年のデビューから2006年12月まで生産されていた旧型アイアンコブラ。とても頑丈。ヤフオクで安く買える。ninjaベアリング装備でのパワーアップが容易。
フレキシグライド
生産終了してしまったベルトドライブのコブラ。
かなり個性の強いアクションに賛否両論あるが、初動の速さは素晴らしい。
ベルトドライブ+アンダープレートのジョジョペが台頭している今の時代であればもう少し需要があったであろう完全に出て来る時代を間違えたペダル。
「私はペダル界のドリームキャスト」
※ドリームキャスト(Dreamcast)は、セガ・エンタープライゼス(後のセガゲームス)が発売した家庭用ゲーム機である。一般にはDCやドリキャスの略称で呼ばれる。(Wikipediaより引用)
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