1990〜2000年代のラウドロック界で一世を風靡したペダル、アイアンコブラ。
大音量のバンドサウンドの中でも埋もれない、
強烈なアタックが得られる反面、
屈強な外国人向けのヘヴィデューティーな作りから、軽いペダルに慣れている日本人ドラマーにとっては好みの別れるペダルでもありました。
今回はそんなアイアンコブラが以前より軽くなったとの噂を受けて、新型アイアンコブラ(ローリンググライド)を徹底レビュー。
まずは比較画像から
左がスピードコブラで右が今回の主役、アイアンコブラです。
フットボードの長さは標準的であり、今回のリニューアルからスピードコブラ同様、カム側面がくり抜かれ、以前よりも軽くなったとの事。
スピードコブラの軽快なアクションは好きだがフットボードが長すぎるという方への次の一台に成り得るのか。
早速、本音レビューを開始致します。
踏み込みに関して
踏み込みが重いという印象は無く、とてもスムーズに動く。
スピードコブラの方が確かに踏み込みが軽く感じるが、軽い方が必ずしも優れているという事ではありません。
振り子運動によるスピードコブラとの比較
ペダルの軽さやスムースさを表現する手段としてペダルの振り子運動を確認する方法がありますが、私の所有しているスピードコブラとアイアンコブラのスプリングを同じ張り具合にし、同時に振り子運動させた所、意外にもアイアンコブラの方が長い時間、往復運動が続きました。
この事から往復運動の長さ=ペダルの踏み込みの軽さに直結する訳では無いことが判明。
ペダルの踏み心地はカムの形状、フットボードの重さ、長さ、各部の固定方法etc…色々な要素が複雑に絡み合って成立しているので往復運動の長さに限らず、「これはこうだから、こっちのペダルの方が良いですよ」と安易にお答え出来ない部分が多々あります。
なので、自分のやっている音楽、奏法にピッタリのペダルを見つける最良の方法は実際に試打する以外にありません。
アイアンコブラが得意とする音楽
しかし、ひとつ例を挙げると、一般的なテンポの曲(J-POP〜ロック、メロコア等)で説得力のあるビート、グルーヴを出したいのであれば、良い意味でペダルを踏み込んだ際にタメが効くアイアンコブラの方が楽曲にパンチあるグルーヴを加えやすいと感じます。
またツインペダルを使わずに片足だけで行うゴスペルチョップス系フレーズに関しても、パワーのあるアイアンコブラの方が適しているでしょう。
フットボードの戻りの際に生じる圧(返りの強さ)について
アイアンコブラの特徴であり、好みの別れる部分、それがペダル踏み込み後に感じるフットボードの「圧」。
特に、メロコアで多用される2ビート「ドッタン、ドドタン」のドドはこの圧を感じながら踏む事で、どんな爆音の中でも埋もれる事無く、説得力のある音を安定して踏み続ける事が可能。
その反面、(踏み込み自体は軽いが)戻りの圧が強過ぎて足が疲れてしまうという声も。
純正スプリングのテンションが他メーカーのスプリングと比べて強く、普段から個人練習等でフットワークを鍛えていないドラマーやテンションの緩いスプリングに慣れているドラマーにとってはアイアンコブラ=重いペダルという印象を受ける要因の1つと言えます。
ちなみに、この「圧」の解決方法としては「スプリングの交換」が一番手っ取り早く、簡単です☆
嘘みたいな話ですが、スプリングをアイアンコブラの純正スプリングからスピードコブラ用、もしくはDW用のスプリングに交換する事で、フットボードの圧が緩和されるだけで無く、踏み込みまで軽くなるのです!
万が一、新型アイアンコブラを買って自分に合わないと感じた場合も直ぐに手放すのではなくスプリングを交換してみるのをお勧めします。
画像はスピードコブラ用のスプリングを装着。踏みこんだ時の感覚はかなりスピードコブラに近付くが、戻りに関しては悪くなるのでコブラコイルによる微調整が必要。(DWも)
パワーストライクコブラビーターについて
新しいアイアンコブラに標準装備の新型ビーターですが、デザインに反して、以外に万能で踏み方次第でオールジャンルに対応出来るだけの守備範囲の広さを持っていると感じました。
方向性的には以前のコブラビーターのようなアタック優先のキャラクターではなく、明瞭なアタックの中にもしっかりとした胴鳴りと気持ちの良い打感を両立。
(独特のビーター形状については)アイアンコブラ特有のタメの効いた踏み心地を維持しつつ、以前までのアイアンコブラで感じた出音の立ち上がりのタイムラグを解消する為の独特な形状。
よって他メーカーのペダルではこのビーターの真の恩恵は得られないと思います。
往年のアイアンコブラユーザーが違和感無く新型に乗り替えられる踏み心地やパワー感を維持しつつ、進化を遂げている点にTAMAのアイアンコブラへの思いを感じずにはいられない。
余談ですが、スプリング固定箇所が稼働する事からチタンビーター(チタンシャフトがしなる事で足の疲労軽減や音量アップ)、スピードスターベアリング(スプリングの反応アップと足の疲労軽減)などのパワーアップアイテムを取り付けた時の効果は他メーカーのペダルよりも高いと思います。
最後に
アイアンコブラ=ロック、ハードロック向きという先入観を覆す素晴らしい改良が施されており、このペダルの完成度の高さと、このペダルに対するメーカー愛を改めて感じました。
最近の流行としては軽さに特化したペダルがトレンドになりつつありますが、今も昔も変わらず愛される秘密が新型アイアンコブラにはあると思います。
今回はスピードコブラと比較しやすいように同じローリンググライドで検証しましたがパワーグライドも機会があれば試してみたいです。
1つ念押ししたい事としましては新型スピードコブラで出来て、新型アイアンコブラで出来ないという事はまずありません。
プレイスタイルによってはスピードコブラよりアイアンコブラの方が速く、かっこいい演奏が出来るというドラマーさんも実際に居られます。
大切なのは自分とペダルがフィットしているかどうかだと思います。
購入の際には大いに迷う事かと思いますが宣伝文句に惑わされず、自分のスタイルに合ったベストなペダルを探してみて下さい。
私のレッスンではスピードコブラを始めとするTAMAのほぼ全てのフットペダルを試して頂くことが可能です。
ペダル選びで悩まれている方はどうぞお気軽に下記お問い合わせフォームにてご連絡下さい。